
本日ご紹介するのは西口一希さんの「たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング」を要約・解説します。
こちらの本は
P&G、ロート製薬、ロクシタン、スマートニュースなどのマーケティングにおいて圧倒的な結果を出された著者の知見がすし詰めされている超良書です。
本書の主張を一言でいうと、
一人の名前を持った顧客(N=1)を徹底的に理解しよう!
です。
本書を読むと、たくさんの顧客からアンケートやヒアリングをすることがあまり効果的でないと理解できます。
それよりも、一人の顧客を深く理解し、共感する。
このほうが圧倒的に良質なマーケティング施策を見いだせるんです。
その理由について解説します。
「 実践 顧客起点マーケティング」は内容が充実しすぎ!
本書は内容がとても濃いです。
なので複数回に分けて解説します。
第一回の本記事ではその前提となる「マーケティングにおけるアイデア」について解説します。
本記事の結論
本記事の結論から先にお伝えします。
それは、
主たるプロダクトアイデア、従なるコミュニケーションアイデア
です。
この記事の3つのポイント
- アイデアとは何か
- プロダクトアイデアとコミュニケーションアイデア
- 早期の認知形成の重要性
この3つについて本記事ではお伝えします!
1、アイデアとは何か
アイデアとは、
独自性と便益を兼ね備えているもの
です。
ここでいう独自性とは、他にない特有の個性であり、唯一無二とも言い替えられる既視感のない特徴をいいます。
つまり”Never”な個性です。
これまでに
- 見たことない、
- 聞いたことのない、
- 触ったことのない、
- 嗅いだことのない、
- 経験したことのない
という五感で感じたことない。
こういった個性を本書では”独自性”と定義しています。

独自性と差別化の違い
ここで注意してほしいのは独自性と差別化の違いです。
よくマーケティングにおいてはよく「差別化しろ」と言われます。
マイケル・E・ポーターの著書「競争の戦略」で提唱されている内容です。
「競争の戦略」においては、「差別化しろ」は、独自性を意図しています。
ですが、一般的には「比較優位性」の意味と誤解されています。
つまり、「差別化しろ」が、「~がより高い、強い、優しい、うるおう、清潔に・・・・」
など、競合と比較合戦することと誤解されているんです。
アイデアの独自性は、”よりよい”比較優位性ではありません。
唯一無二なOnly-one Uniquenessを意味します。
スティーブ・ジョブズがこのような示唆の富んだ発言を残しています。
「女性を口説くとき、ライバルの男にバラを10本送ったら15本送る。そう思った時点で君の負けだ。ライバルは関係ない。その女性が本当になにを望んでいるか見極めることが重要なんだ」

便益は顧客にとって都合良くて利益があるもの
アイデアに必要な要素として、独自性の次は便益です。
便益は顧客にとって都合がよくて利益があることを意味します。
言い方をかえると、”不”の解決。
不便、不利、不快、不満、不都合、不具合などを取り除くことです。
顧客の課題解決とも言えますね。
アイデアの四象限
独自性と便益をある・なしの四象限で表すと以下の通りです。

このように図の右上に位置する独自性と便益を兼ね備えたものをアイデアと呼ぶことができます。
他の象限を見ると、
”独自性がない・便益がある”は、コモディティです。
差別化がされていない代替性のある商品やサービスを指します。
”独自性がある・便益がない”は、ギミックです。
人目をひくだけの仕掛け、いきすぎると詐欺ともいえます。
最後に”独自性・便益ともにない”は資源破壊です。
あらゆるリソースを無駄遣いしている資源の無駄といえます。
なので、独自性と便益の両方を持っているものだけがアイデアと呼ぶことができます。
2、プロダクトアイデアとコミュニケーションアイデア
ここからさらに、アイデアを分解します!
それがプロダクトとコミュニケーションです。
サービスと宣伝認知とも言えますね。
関係性としては、プロダクトアイデアが主体でコミュニケーションアイデアが従属しています。
プロダクトの独自性が弱くても便益があれば、コミュニケーションで補強できます。
反対にプロダクトアイデア自体に便益がなかったとします。
その場合、コミュニケーションアイデアだけでは、中長期的に売上を伸ばすのは難しいといえます。
良いプロダクトアイデア
プロダクトアイデアにおいて独自性と便益が備わっているもの。
それが良いプロダクトアイデアといえます。
例で言うと、
- 登場時のiPhone
- 最近でいうと、テスラの電気自動車
などがそれにあたります。
独自の有効成分〇〇の風邪薬という商品、よく目にすると思います。

- 独自性の有効成分
- 便益が風邪をなおす
これも悪くはないのですが、風邪をなおすという便益だけでは、どの風邪薬でも共通です。
競合と比較されやすい状態と言えますね。
なので、コミュニケーションアイデアでの工夫が重要になってきます。
コミュニケーションアイデア
コミュニケーションアイデアは、
プロダクトアイデアを対象顧客に伝え、購買行動をとってもらうためのコミュニケーション自体のアイデア
を意味します。
コミュニケーションアイデアも独自性と便益で成り立っています。
それぞれをわかりやすくいうと、
- 独自性→どれだけ注目されるか
- 便益→コミュニケーションに接すること自体に楽しい、面白いなどのプラスの感情をもたらせるか
です。
プロダクトアイデアとコミュニケーションアイデアの4象限

図のように真のアイデアはコミュニケーションにおいて奇をてらう必要はありません。
ストレートにその魅力を伝えればいいのです。
たとえば、AppleやAmazonは、タレントも使わず商品やサービスだけを表現したシンプルなつくりです。
これは商品やサービス自体への自信の表れかもしれませんね。
裏を返すと、もしCMや広告で奇をてらうものがあったら、商品に対して自信がないと考えているのかもしれません。
3、早期の認知形成の重要性
強いプロダクトとコミュニケーションアイデアを持っていても追随者にポジションを奪われることはよくあることです。
フリマアプリのメルカリも後発ですが、No.1になっています。
西口さんが手がけた肌ラボもヒアルロン酸化粧水としては後発でした。
このように多くのトップブランドはプロダクトアイデアにおいて、後発のことが多いです。
これが意味することは、先行の商品の勘違いです。
認知を十分にとれていなかったから売れていなかっただけ。
それに気づかず、コミュニケーションを怠ったり、商品開発自体をやめてしまう。
このようなケースは非常に多いです。
とはいえ、売れていない理由はシンプルにプロダクトアイデアが不足している状態の場合もあります。
なので、認知が不足しているのか、プロダクトアイデアが不足しているのか見極めなければなりません。
プロダクトの最大ポテンシャルは実現されていない
著者によると、世の中の商品のほとんどがターゲット顧客全体の50%ほどの認知も獲得できていないといえるそうです。
なので、顧客に知られていない。
つまり、実質的には新商品なんです。
なので、売れていない理由をよく自虐的にプロダクトアイデアにせいにする話をよく聞きます。
ですが、実はそんなに自虐的になる必要はないケースが多いかもしれませんね。
成長のポテンシャル
ポジティブに考えると、マーケットのターゲット顧客全体で50%の認知すらとっていない商品は、実現している倍以上の売上を獲得するチャンスがあるといえます。
ネガティブに考えると、追随する競合にそのチャンスを奪われる可能性があるともいえます。
まだ実現できていない成長のポテンシャルを整理すると、
- そもそも知らない
- 知っているが買う理由や動機がない
- 知っていて、買いたいが販路がない/わからない
の3つに分類できます。
- 1の場合は、メディア戦略の見直し
- 2の場合は、ターゲット、価格、訴求内容の見直し
- 3の場合は、販路の拡大強化、販路自体の認知形成の強化
という改善をする必要があります。
まとめ
いかがだったでしょうか?
本記事では、西口一希さんの「たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング」についてご紹介しました。
まとめると
まとめ
- 強いアイデアには独自性と便益が必要
- プロダクトアイデアが主、コミュニケーションアイデアで従
- プロダクトアイデア・コミュニケーションアイデア共に独自性と便益が必要
- プロダクトが強い場合のコミュニケーションはストレート、弱い場合は独自性を出す
- ほとんどの商品がターゲット顧客全体の50%ほどの認知も獲得できていない。なので早急に認知を獲得すれば、売上を大きく向上させ、確固たるポジションを確立することができる。
です。
「たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング」は本記事で取り上げた内容だけでは語りきれておりませんので、続編の記事もあげますのでそちらもチェックしてください。
また、本記事で「たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング」に興味を持った方はこちらからぜひ、お買い求めください。
たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング」はオーディブルもあります。
本書は残念ながら、オーディブルの無料対象とはなっておりません。
別途課金が必要となります。
が、課金する価値はあります。
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