新規事業開発の99.7%は失敗する
新規事業は千三つである。
新しい事業として1000個のアイデアを実行しても、成功するのはせいぜい3つくらい。
確率だと、そのくらい低い。
こう聞くと、新規事業開発や起業のリスクが高すぎるように思える。
- 大企業だと、既存事業で得た利益や、本来ならば既存事業にかけられる時間的リソースを突っ込む
- 起業家だと、起業家自身の物的・時間的資産のすべてを捧げる
ここまでして、新規事業開発・起業に取り組むのに、0.03%しか成功しないなんて割に合わなすぎる。
が、この99.7%という失敗確率を下げるやり方が確立されている。
本記事はそんな話である。
はじめに
みなさん、こんにちわ。
本ブログの管理人のRRです。
今回は、
スタートアップサイエンスとリーンスタートアップ
についてお話します。
この記事が解決出来るお悩みは、
- 起業・新規事業開発についての前提となる考え方を知る
です。
では、いってみましょう。
スタートアップサイエンス
スタートアップサイエンスをひとことで定義すると、
一見不確かに思われる新規事業開発・起業に対して、再現性のある科学的手法を構築する。
です。
そして、このスタートアップサイエンスの前提となる考え方を一言で表すと、
新規事業開発・起業においては失敗率を下げることに注力しよう。成功率はあげられない。
です。
つまり、成功を高める施策ではなく、失敗を回避する施策にフォーカスを当てることが重要となります。
まずは新規事業開発・起業を目指すなら、この前提となる考え方を意識することが非常に重要です。
なぜ99.7%も失敗するのか
この答えとして、Y Combinatorのポール・グレアムの言葉が有名です。
その言葉が、
「スタートアップ起業や大企業の新規事業部門はそもそもいらないものを作っている」
です。
「いらないものばかり作っているから、大半失敗する?
大企業の新規事業開発部門の担当者や起業する人たちは、高い志と圧倒的ポテンシャルを持った優秀な人が多い。
そんな優秀な人たちが、いらないものを作るはずがない。」
そう思わざるをえません。
この発言に信憑性はあるのでしょうか。
Y Combinator創業者のポール・グレアムとは何者?
この言葉を発しているY Combinator創業者のポール・グレアムがどんな人かをご紹介したい。
Y Combinatorは、シリコンバレーの起業家育成塾。起業界のハーバード大学と言われています。
ポール・グレアムはシリコンバレの伝説的なアクセラレーターで、Y Combinatorの塾長的存在。
魁・男塾でいうところの江田島平八的な存在です。
Y Combinatorでのポール・グレアムの輝かしい実績については、こちらを参照してください。
さらに詳細を知りたい方はこちらの本も必読です。
つまり、
「スタートアップ起業や大企業の新規事業部門はそもそもいらないものを作っている」
という言葉は、新規事業を起こすことに関してのプロ中のプロが言っている発言であるということです。
この言葉はけして個人の憶測ではなく、ある種歴史から読み取れる事実に近い金言です。
人々が欲しいと思うモノを作ろう
ポール・グレアムの言葉を受けて、
「じゃあ、自分の事業の想定顧客が欲しいものを作ればいいんだな!カンタンじゃん!」
とばかりに、意気揚々とアンケート調査をして、アンケート調査から最も多かった意見を抽出。
その意見に応えるアイデアを実行したとします。
その場合、おそらくそのアイデアは失敗します。
顧客は自分たちが欲しいものを知らない
なぜ、失敗するのか。
その理由として、大きく2つあります。
事業起案者は自分が好きなものを作りがち
「顧客の声に耳を傾ける!」
が、カンタンそうに見えて実はカンタンじゃないんです。
なぜなら、事業起案者本人にバイアスがかかってしまうからです。
バイアスがかかって、どうしても自分が好きなモノを作り上げるためだけの情報を集めてしまうんです。
アンケートの設問もそうやって作ってしまいがちです。
なので、顧客の本当の声を聞くことなかなかカンタンではないんです。
顧客自身も自分たちが欲しいものを知らない
顧客自身も自分たちが欲しいものを知らないんです。
これを裏付ける言葉として、よくあげられるのが、アメリカの自動車会社フォード・モーターの創設者であるヘンリー・フォードの言葉である。
もし顧客に、彼らの望むものを聞いていたら、彼らは「もっと速い馬が欲しい」と答えていただろう
である。
もしヘンリー・フォードが顧客の本質を理解せずに、多くの顧客の言う通りにしていたらどうなっていたか。
厩舎を作って、早い馬を量産することをしていたはずですよね
けど、ヘンリー・フォードは違った。
彼らが言ってる言葉の本質を見抜いた。
早い馬ではなく、
早くて快適な移動手段が欲しい
という真意を見抜いて自動車を作り、今のフォード社の成功があります。
なので、顧客の声をただ聞くだけではダメで、そこからどういう本音・欲求が眠っているかを見極める能力が必要となります。
そして、それがカンタンではないことは想像できるのではないでしょうか。
成功を捕まえるのは運に近い
顧客の本音や欲求を捉えて、商品を売り出して成功を捕まえる。
これも文字にすると、容易そうに見えるのですが、カンタンではありません。
というのも、歴史がある程度物語っているんです。
【パソコン】
IBMの初代経営者だったトーマス・ワトソンが、1940年代後半に、
「コンピュータには、世界にせいぜい5台分の市場しかないだろう」
という的外れな発言をしていた、という有名な逸話があります。
【携帯電話】
携帯電話の生みの親、マーティン・クーパー。
彼がアメリカの通信会社でモトローラの研究部長だった1981年当時に、
「携帯電話が固定電話に取って変わることはまずありえない。」
という言葉を残しています。
【iphoneとガラケー】
当時の通信業界は、今でいうガラケー最強の日本が世界をリードしていました。
当時ガラケーは高性能カメラ、ワンセグ放送などあらゆる機能をてんこ盛りにつけていました。
みなさんもご存知とおり、iPhoneにあっさり市場をひっくりかえされました。
しかも機能的には、iPhoneは当時のガラケーより圧倒的に劣る性能だったにもかかわらずです。
多くの日本メーカーや通信会社はこの読み間違えをしました。
そのせいで、今では通信業界での存在感を世界的になくしています。
といった感じで、新しく事業を起こすときに、
- これから流行するサービスはどんなものか?
- これからどんな商品が世の中に求められるか?
といったアプローチだと、世の中のニーズ見誤ることが多いです。
どんなに優秀な人でも、成功する事業を狙いに行く打ち手だと、正確に読みとれないことがほとんどなんです。
リーンスタートアップで事業を考えよう!
ここまでの内容を一旦整理すると、
事業を起こすときに、成功率を上げるというアプローチは、不確実性が高く再現が難しい。
なので、スタートアップサイエンスという考え方のもと、起業の失敗確率が下げる打ち手をとっていくべきである。
です。
そして、この起業の失敗確率を下げる方法論が
「リーンスタートアップ」
です。
リーンスタートアップのポイントは大きく3つあります。
- 「こういうことをしたら失敗するよね」ということを極力しない
- 自分の思い込みを排除する
- 小さく小さく仮説検証すすめて、一歩一歩すすんでいく
です。
「こういうことをしたら失敗するよね」ということを極力しない
明らかにこれやったら失敗するよねってことあるじゃないですか?
その打ち手を打たないで事業計画を作りましょう
自分の思い込みを排除する
根拠なく、直感的に
「これはぜったい売れる!間違いなく売れる!」
みたいな状態は危険です。
映画やドラマでは起業家の第六感的な感覚で成功を見つけるといったストーリーが多いですが、そんなことはごく少数です。
思い込みを排除して、顧客の声に耳を傾けましょう。
小さく小さく仮説検証すすめて、無駄なく一歩一歩すすんでいく
これは大企業にありがちですが、
- 「3カ年計画で新規事業としての売上が10億円必要だから、その規模の事業投資をします!!」
- 「とりあえず新規事業開発の予算とったから、この予算は使い切って!」
- 「とりあえずいいアイデアだから、予算もあるしすぐに開発するよ!!」
といった、自分たちだけの都合で推し進める新規事業開発はたいてい失敗します。
顧客を全く見ていないからです。
必ず顧客にスポットライトをあてて、小さく小さく学習しながら進んでいきましょう。
スタートアップ企業はリーンスタートアップが大前提!!
リーンスタートアップの考え方のひとつに、
小さく小さく仮説検証すすめて、無駄なく一歩一歩すすんでいく
があります。
リーンスタートアップは、特に資金が潤沢ではないスタートアップでは、大前提となります。
限りあるリソースを初めから全て突っ込んで、
「失敗しました~。。。」
じゃ、取り返しがつかないわけです。
- リソースを小出し小出しにして、もう検証する余地もない。
- 失敗確率はゼロに近づけた。
というレベルに到達してから次のステップに進みます。
これがスタートアップが長く事業に挑戦するために必要不可欠な打ち手です。
リーンキャンバスを書こう!!
リーンスタートアップの方法論を具体化するものとして、
リーンキャンバスという事業プランの構築フォーマットがあります。
事業アイデアを具現化するときに、まず第一手としてこのリーンキャンバスを書いていくことが良い打ち手です。
このリーンキャンバスのルール通りに項目を埋めていくと、自然とリーンスタートアップの考え方に基づいた事業を生み出すことができます。
個人の意識や理解度に依存することなく、リーンスタートアップを構造として実現しているところにリーンキャンバスの素晴らしさがあります。
このリーンキャンバスについて詳しくはコチラをご覧ください。
【リーンキャンバス】
おわりに
いかがだったでしょうか。
今回は「スタートアップサイエンスとリーンスタートアップ」というテーマで、
- スタートアップサイエンスをひとことで定義すると、「一見不確かに思われる新規事業開発・起業に対して、再現性のある科学的手法を構築する」
- スタートアップサイエンスの前提となる考え方を一言で表すと、「新規事業開発・起業においては失敗率を下げることに注力しよう。成功率はあげられない。」
- なぜ新規事業は99.7%も失敗するのか。その答えとして、Y Combinatorのポール・グレアムの「スタートアップ起業や大企業の新規事業部門はそもそもいらないものを作っている」という言葉が有名
- 事業を起こすときに、成功率を上げるというアプローチは、不確実性が高く再現が難しい。
- リーンスタートアップのポイントは①「こういうことをしたら失敗するよね」ということを極力しない、②自分の思い込みを排除する、③小さく小さく仮説検証すすめて、一歩一歩すすんでいく、の3つ
です。
次回は、本記事でも最後に触れました「リーンキャンバスの書き方」についてご紹介します。
では、また。